今回は北海道で生活を始めた方や、北海道で長く生活する職場の同僚などからも、車の話題になると話題に出てくる「寒冷地仕様車」のおはなしです。
この記事を検索いただいた方は、きっと寒冷地仕様車のことで、何らかの疑問があることでしょう。新車・中古車の購入でしょうか。冬の寒さの厳しい土地への移住・転居に伴う疑問でしょうか。
私は大阪から北海道に移住し15年。
過去に自動車整備士の仕事をしていた事もあり、車やバイクに関する質問をいただきます。
今回は「寒冷地仕様ではない中古車」を本州で買い、気温マイナス30度近くまで下がる北海道・道東で7年約15万キロ乗っている私。
実体験したからこそ分かる、実践報告を交えてお答えいたします。
- 「寒冷地」の基準は、気温マイナス10℃
- 「寒冷地仕様」を設定していないメーカーもある
- 「寒冷地仕様」は、無くても何とかなる。何とかなっている
- 新しく車両を購入する際「寒冷地仕様」はあったほうが安心・快適
- 「寒冷地仕様」の購入を検討する地域では、新車は必要ない
寒冷地仕様車が推奨される「寒冷地」とは、マイナス10℃より気温の下がる地域
まず、自動車メーカーの基準とする「寒冷地」はいったい何なのか。
実は明確な基準は無く、定義も基準も様々なものがあるようです。その中に、皆さんよくご存じのPanasonic社のホームページに、明確に記載されたものがありました。
日本では一般的に、積雪期間が年間90日以上、年平均気温が10℃以下の地域で、
北海道、東北、北陸など北緯37度以北および高冷地が寒冷地になります。以上、Panasonicホームページから引用
いろんな工業団体がこれらに準じており、国土交通省「住宅の省エネルギー基準」ではI地域(寒冷地)及びII地域(寒冷地)とIII地域(準寒冷地)分けられていますが、やはり明確な「温度の基準」は見つけきれませんでした。
自動車業界での「寒冷地仕様車」に求める基準は「マイナス10℃」を基準にしているようです。(なぜマイナス10℃という明確なものも無いようですが、年平均気温が10℃以下の「寒冷地」は、冬季の気温がマイナス10℃を下回ることを基準としているのでしょうか)
「寒冷地仕様車」を設定していないメーカーもある
寒冷地仕様車の設定が「無い」メーカー
スバル・ホンダ・マツダは、もともと寒冷地仕様車の設定が無いメーカーです。寒冷地での維持、走行がはじめから想定された作りになっています。※スズキは4WD車が寒冷地仕様となっているものが多いですが、全車設定ではありません。
外国車に関しても、本国が寒冷な気候のメルセデスベンツ・BMW・フォルクスワーゲンも、現行車においては寒冷地仕様という設定は無いようです。
設定が「ある」メーカー
トヨタ・日産・三菱・ダイハツなどでは、寒冷地仕様の設定があります。
すべての新車に装備するのではなく、必要な方にオプションで準備して必要な装備を費用負担してもらうことで、寒冷地仕様の必要ない方へ新車を販売する際のコストダウン・適正化につなげているということでしょう。
しかし近年、寒冷地仕様の設定が無い車種が出てきました。
別に作成することによる、作業の煩雑さを考えると、作業人員やパーツを集中できるこちらのほうが理想的なのでしょう。
「寒冷地仕様車」自体は、メーカーの設定があればたとえ沖縄であっても全国どこでも購入できます。(塩害塗装が施された寒冷地仕様車を、沿岸部に住む方が購入されることもあります)
新車購入時に「寒冷地仕様」オプションを選ぶメリット・デメリットはこれだけある
メリットは、これだけの装備による「冬の安心感」「快適度」
メーカーや車種によって、設定される装備は違うのですが
電気周りでは
・バッテリー容量の大型化 ・「車の発電機」オルタネーターの強化 ・スターターモーターの強化 ・ワイパーモーターの強化など
外装装備では
・スノーワイパー ・リヤワイパー追加 ・ウインドウォッシャー液タンクの大型化 ・バックミラーヒーター ・リアフォグライトなど
車内装備では
・車内ヒーターの強化 ・シートヒーター ・ハンドルヒーターなど
機能面では
・クーラント濃度の適正化 ・塩害塗装など
私の乗るハイエース(ディーゼル)ではスライドドア凍結防止ガード、フロントドア凍結防止モール、燃料凍結防止ヒーター、電気式車内ヒーター、最も特筆するのはバッテリーの2個目増結(並列式の配線として、電圧の強化による低温時のエンジン始動性の安定)が機能的に大きくちがうところでした。
新車購入時、装備によっては数万~10万円程度費用がかさみますが、その値打ちが十分感じられるほどのメリットでしょう。
これほどの装備を「あとで10万円払うから付けて」といっても不可能。製造段階で組み上げてくれる際だから出来てしまう「価格破壊」的なオプションです。
デメリットは、やはり価格と「下取り時に考慮されない」こと。
10万円程度かさむ費用を「メリットとして感じない」ということもあるでしょう。
「自分の欲しいオプションや、やりたいカスタムが寒冷地仕様を付けると邪魔をして、付けられなくなってしまう」ということがあるかもしれません。
他にも車の売却時に、中古車として売却する際の査定に影響することがありません。
これは中古車販売業者にとっては「販売時、保証しないといけない機能や部品が増える」ことなどが理由にあります。
「寒冷地仕様」は必要?不要?=「無くても何とかなる」が、15年の経験値からの答えです
「なっています(経験談)」
冬にはマイナス30度近くまで下がる日もある「極寒冷地」の道東に暮らして15年以上。
ユーザー視点側からも整備士側の視点からも、胸を張って申しあげるのは…
寒冷地仕様車でなくても、維持して乗り続けることは出来ます。
ただし、前提として「整備しだいで」「不自由さを感じながら」という前置きが付きます。
- エンジンのかかりが弱いなら「バッテリーは性能のいいものに、指定された年数・距離ごとに積み替える」
- ヒーターの効きが弱いのは「暖まるまで、着込んで耐えしのぐ」
- スライドドアが凍結するのは「開くドアで対処して、暖まって開くのを待つ」など。
ただ、エンジン凍結だけは絶対に避けないといけません。
最低限、絶対的に必要な整備は「エンジン冷却液(クーラント)」の交換。これを怠ると、最悪の場合エンジンが破損し廃車です。こちらの記事もぜひご覧ください。
北海道に車を持ってきて、最初の冬を迎える前に「本州からの車で、初めて冬を越すのだけど」と、馴染みの車屋さんや整備工場で話せばすぐにわかってくれます。寒冷地で冬を越すための、必要な整備を施してくれるでしょう。
他にも冬の運転には、これだけは準備をおすすめするものがあります。こちらの記事もお願いいたします。
ただし、購入時は「寒冷地仕様車」を選びたい。デメリットよりも、大きなメリットがあります
私は次回、車を入手する際は必ず「寒冷地仕様車」もしくは「寒冷地仕様の設定をしていないメーカー車」にします。
冬のエンジンのかかり具合やドアの凍結、ヒーターの効きを考えると、寒冷地に合わせた作りをしているメリットのほうが大きく上回ります。
どれだけメンテナンスに心がけていても、マイナス30度近くになるとエンジンがかかってくれるかどうか毎日ヒヤヒヤします。
エンジンが掛かっても、寒くてなかなかエンジンが温まらず、フロントガラスも凍り付いたまま。
スライドドアを開けようとしても、凍り付いていたり。冬になると、珍しくありません。
冷たいシートに座って、手袋を履いた手でハンドルを持ってようやく走り出せても、ヒーターからの風は冷たいまま。ずっと車内で震えながら走っています。
車社会の北海道。乗る機会も多いわけですので、私は選べるシチュエーションなら迷わず「寒冷地仕様車」(もしくは寒冷地仕様設定の無いメーカー車)、それも中古車をおすすめします。
「寒冷地仕様」を必要・メリットと感じる地域では、新車は不要な理由
寒冷地では、車体の痛み方が半端なものではありません
寒冷地では、道路の凍結による事故防止のため、溶かすための「塩カル」と呼ばれる「塩」が道路に散布されます。この「塩分」が車のボディやフレームを錆びさせ、無残な姿に朽ちさせるのです。
「寒冷地を走る車は、錆びに強い塗装をしているって聞いたけど?」という方。塩カルはその塗装をあざ笑うかのように、突き破ってくるのです。
詳しくは、こちらの記事に詳しく書いています。ぜひご覧ください。
このため、新車を買ってどれだけメンテナンスしていても、7.8年も走れば足回りはガタガタ。寒冷地では車生活という場所も多いので、走行距離も伸びます。本州では10万キロ走れば過走行というイメージがありますが、北海道ではただの通過点レベル。
車体の痛みに拍車をかけるのです。
数百万円出して買った新車を乗り換えるにしても、北海道内で走っていた車はサビ+過走行などで程度も悪く、道内の買い取り業者ですら嫌がる始末です。
こだわりが無ければ「寒冷地仕様の中古車」をおすすめ
北海道内で走っていた中古車だと、見つかる可能性が高いです。しかし前項で述べた「足回りもボディもガタガタの中古車」ではないかどうか、充分な見きわめが必要になってきます。
北海道の中古車販売の業者さんの多くは、痛みの少ない(販売後のトラブルリスクの低い)本州からの車両を買い付け、販売しています。
そのため、寒冷地仕様車は販売される数が多くないのが実情。じゃ、やっぱり新車を…となってもリセールは期待できない。なかなか悩ましいところです。
寒冷地仕様の、北海道内を走っていたけど程度のいい中古車にめぐり合えばラッキー。
現実的には、スバル・ホンダ・マツダは、もともと寒冷地仕様車の設定が無いメーカーの車体で検討するのがお手軽です。
新車派の方に「カーリース」は、寒冷地仕様車が必要な方には、かなり有益です
冬場も乗る寒冷地の車は先の話のように、コスパの悪い消耗品と割りきらないといけません。
そこで新車派の方におすすめしたいのが「カーリース(クルマのサブスク)」です。
乗りたい車種・オプション装備で乗れますし、標準メンテナンスも車検も保険も税金も全部コミコミというサービスもあります。
もちろん寒冷地ならではの痛みが目立ちはじめ、自己所有なら「修理に〇〇万円って言われたけど、今度の車検で乗り換えようかどうしようか…」という悩みも、カーリースならそれらを含めての値段設定になっていることがほとんどなので『月〇万円』の支払いだけを考えればOK。
別に整備が必要になっても、提携の整備工場があるのでいろいろ考えなくても良くなります。
ファイナンシャルプランナー視点で、カーリースと新車ディーラーローンを比較すると…
- 「乗りつぶし」予定での新車カーリースは、延々続く、ただの長期ローンというだけ。
- 「7年や9年」といった長期リース契約が終わる頃には、査定ゼロ。これならカーリースのメリットが感じられない。
- 『低金利新車ディーラーローン』は、あくまで新車購入時の『車体部分』だけ
- 2年ごとの車検時の費用負担は別に追いかけてくる。車検やタイヤ代、保険などのローンがその都度出来ても、これは新車ローンの対象外。高金利での負担を求められる
最終的には、新車ディーラーローンでの購入が割高になることも。
→これらを踏まえると、乗り換え前提の車選びをしなければならない北海道では、「3年乗り換え」でのカーリースの契約はアリな選択だと思います。
- 車の痛み方に合わせた乗り換え時期
- 車検更新をするかどうか、修理費用との兼ね合い
- 冬タイヤ・夏タイヤの交換時期
- 走行距離で変わる任意保険料など
ほんとうに面倒です。これがある程度「月〇万円」「〇年で終了」と分かりやすくなるなら、私もひとつの選択肢として検討したいと考えています。
詳しく「新車カーリース(サブスク)」の上手な活用方法をまとめた記事は、こちらをどうぞ。