北海道で生活するうえで、絶対に避けて通れないのが「冬道の運転」
特に公共交通手段の脆弱な道東。この地に住む私にとって車は、生活するうえで欠かせないものです。
通勤や買い物、子どもの送迎などにも車が無いと生活は成り立ちません。
そうなると、避けて通れないのが「吹雪、雪道の運転」です。
ホワイトアウト、ブラックアウトバーンなど、夏とは道路状況が一変。
出先で不意な天候の変化に遭遇し、吹雪の中を車中で一晩過ごす可能性があります。
冬の北海道を生活するうえで「クルマには何を備えておくと、命を守れるのか」を、元・自動車整備士で災害支援看護師の私が、北海道に移住し15年間で得た実生活の経験・体験で得たものをもとにお伝えいたします。
また、この記事には前編として【準備しておきたい「冬の北海道 車に備える必需品8選」】を設けております。そちらの記事には、冬の運転において一般的な備えを紹介させていただきました。そちらもお読みいただけましたら幸いです。
はじめに:北海道の冬、吹雪の夜に起きた悲惨な事故
・・・・・今でも忘れられない、猛威を振るったあの吹雪の夜の出来事 ・・・・・
2013年3月。道東の中標津町で家族4人が、雪で埋まった車の中で亡くなるという事故がありました。一酸化炭素中毒だったようです。
その翌日には、自宅近辺まで帰っていたにもかかわらず、方向感覚を失う「ホワイトアウト」状態で車の外に出て、そのまま遭難し帰らぬ人となった悲惨な事故もありました。
これらの痛ましい事故以降、道東は吹雪予報であれば「夜間は国道以外、除雪はしない」ことが徹底されるようになりました。
命を自らが守るために、吹雪などの悪天候時や急激な天候の変化が予測されるときは「外に出ない」ことを意識付けることが求められています。決して大げさではないでしょう。
緊急時には、高度医療機関で治療を行うための患者さんを、約100キロ離れた町まで救急車で搬送する際の添乗をします。
冬の天候は昼夜を問わず猛威をふるい、国道でさえも猛吹雪で視界が遮られることも、決して珍しくありません。
熟練の救急隊が運転する救急車であっても、患者さんそして搬送する救急隊および医療スタッフの安全が担保されない交通事情となり、引き返さざるを得ない状況にも遭遇しました。
翌日早朝に再度搬送を試み、幸い患者さんに生命の危険は生じませんでしたが、冬の北海道は、普通の生活を送っていても命の危険度が増すのです。
画像出典は日本気象協会(tenki.jp)より
「排雪用スコップ」は、冬の北海道で命を守る、車の装備の必需品。
1.排雪用スコップ
アルミ製のものが軽くて丈夫でおすすめです。
キャンプ用品店に行くと、柄が伸縮性のものがあります。かさばらずおすすめです。小さなお子さんが居られるご家庭なら、日常のレジャーの際にも重宝します。
プラ製のものは、割れると悲惨です。ただのごみと化します。
本気で雪に埋もれてしまった際は、エンジンを掛けたままだと排気ガスがマフラーをふさぎ一酸化炭素が車内に充満して、意識を失い静かに命を失います。この記事の最初に述べた事故はまさにこの状態だったのでしょう。
そのため雪の量によっては、数分おきに猛吹雪の中を外に出て、除雪が必要です。濡れた衣服が体温の低下を招き、体力の消耗がますます激しくなります。
豪雪や吹雪の中を車外に出て、生命を守るため除雪をするための、最終手段の道具となるでしょう。
現実的にはこの状況下では、エンジンを切って暖房オフで救援を待たなければなりません。
「エマージェンシーシート」も、まさに非常時に命を守る、車に積んでおきたい必需品です。
2.エマージェンシーシート
アルミで出来た寝袋、と言えば伝わるでしょうか。透湿性は一切無く、自らの体温を下げない緊急時のシートです。
ひとつ数百円程度の小さなものですので、ぜひ一つ車内に常備ください。ホームセンターの防災コーナーなどで手に入ります。
「水、食料(保存食ようかん)」を車に装備し、冬の北海道で命を守ります。
3.水、食料
数日分の用意は要らないかもしれませんが、人数分の準備が必要となってきます。
冬季、車内に常備させてある水(ペットボトル)は凍って飲めない状態になっている可能性が高いです。
そのため、悪天候が予想されている日の運転の際には、事前に常温の水を準備して出かけるようにしたいところです。
トイレの心配も出てきます。飲水を控えるシチュエーションかと思いますが、水分の控えすぎはただでさえ狭い車内で血流も悪くなることで、静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)の発症リスクが高まります。
食料については手軽に食べることが出来、糖質もとれ、緊急時はエネルギー消費も大きくなりますのでカロリーの高いものがおすすめ。
保存食で準備されている「ようかん」が手ごろでかさばらず、私も車内に常備しています。特に子どもさんや高齢の方が居られるなら、皆さんが抵抗なく食べてもらえるものが良いです。
「携帯トイレ、紙おむつ」も冬の北海道、車内に備えておきたい物のひとつです。
4.携帯トイレ、紙おむつ
車内でこれを用いるシチュエーションの場合には、外に出られない悪条件のことでしょう。これも人数分、ご用意ください。心理的に追い込まれる状況下で、しなくていい我慢は少ない方がいいでしょうから。
バスのような大きな車で、乗っているのは自分ひとりだけならともかく、一般の乗用車内で携帯トイレを用いてあなたは用を足せますか?
緊急事態とは言え、そこまで気を許せる方だけではないと思います。
たとえ家族であったとしても、あなたは小さな車内で携帯トイレで用を足せますか?
そこで常備を検討してほしいのは「大人用紙おむつ」なのです。
消臭成分も入っていますし、そのままビニールに入れて密封してしまうだけで破棄も簡単。排泄時の音も最小限のものになります。ぜひご検討ください。
濡れた体から命を守るため「着替え、軍手」の備えも必要になります。
5.着替え、軍手
どうしても外に出ないといけないシチュエーションとなれば、必ず雪まみれで車に戻ることに。濡れた衣服は一気に体温を奪います。
大雪で外に出ることもできず、エンジンを掛けられない状態で救援を待つとなれば、気温は氷点下です。大変危険です。
「懐中電灯、ヘッドライト」は、冬の北海道に限らず、車の必需品です。
6.懐中電灯、ヘッドライト
車内では明かりの確保が大切。エンジンを掛けられない状況下では、バッテリー保護のため室内灯もつけることも躊躇されます。
凍てつく寒さの中、真っ暗な車内で過ごすのは、心理的な不安がとても大きくなることが想像いただけるかと思います。
最悪、外に出る時の作業灯としてもキャンプ用品でのヘッドライトがあれば、両手を使えますので重宝します。
(冬の備えとするときは、不意に電源が入ったままにしたり液漏れで使えないなどのトラブル防止のため、電池を抜いた状態でライトと一緒に保管しておくことを強くおすすめします。)
「ポータブル電源と電気毛布のセット」の装備は、冬の北海道での車内で、まさに命綱!
7.ポータブル電源と電気毛布のセット
携帯カイロだけでは、とても寒さをしのげません。エンジンを切らないといけないシチュエーションであれば、スマホの充電も出来ません。情報も得られなくなります。
そこそこの容量のものを準備すれば、電気毛布なども一晩使いっぱなしが出来る容量の物もあります。火も使わないので、室内で一酸化炭素中毒になる心配もありません。
ここ数年で防災用品やレジャー用品として、ずいぶん一般的に見かけるようになりました。3~4万円ほどのものでも十分な役割を果たしてくれるくらい、値段も落ち着いてきました。
強くお勧めしたい道具の一つです。
容量は小さめですが、充分な性能。モバイルバッテリーなどで有名な「Anker」さんのポータブル電源をご紹介します。
冬の北海道は、一般生活の中であっても、命の危険性が高まる出来事が起こり得ます。
そのリスクを最低限のものに出来るよう、自らも心掛けたいものですね。
こちらのリンクから他の話題もご覧いただき、みなさまの参考としていただけたり、疑問解決の一助となりましたら幸いです。