北海道の長い冬が終わり、雪が溶けだすと「味覚の北海道」のシーズンが始まります。
食べ物が本当においしく、日本の食料自給率ナンバーワン都道府県の北海道。
自然の食材である山菜を、採って楽しまれる方や食べて楽しまれる方も、春は絶好の季節を迎えます。
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本州ではあまりメジャーではありませんが、北海道に住む者にとっては「春の季節の味」に位置づけされる食材・行者にんにくです。
私は関西から北海道に移住し、15年ほどになります。移住するまでは北海道に観光で来た際、ちょこっと口にする程度で、正直よくわからない食材でした。
行者にんにくを「ちょっと知って、気になっている」「一度、食べてみたいがどんなものなのか」から「魅力に取りつかれてしまった」方まで、この記事は必見です。
・「そもそも、行者にんにくとは」
・「旬の時期と自生する場所」から
・「おすすめの食べ方」「入手方法」まで。
たっぷりの内容でお伝えいたします。
行者にんにくって、何?「春だけ採れる、山菜です」
ネギ科の植物です
和名:ギョウジャニンニク(別名キトビロ・ヤマビルなど)はネギ科の多年草で、玉ねぎやニラの仲間になります。※このホームページでは「行者にんにく」と記載いたします。
近畿より北の高山地帯に群生します。その昔、修行する行者が、厳しい修行のあいだに体力維持のため食べたことからこの名がついたとされていますが、微妙にニュアンスの違う資料も多く、諸説あるようです。
林の中に、群生しています
採れる場所は、木々に囲まれほどほどの日当たりがある山の斜面や、小川の淵などの常に湿っている林の中・樹林帯に群生しています。
まさに群れをなすように育ちます。一か所に生育したものが、雨などの水の流れで種子が広がっていくのでしょうか。山の高いところから、低いところへ群生地が広がっていきます。また、川などでは下流の方に見つけることが出来ます。
北海道では、4月初旬から下旬ごろがハイシーズン
北海道では、アイヌネギという俗称がある行者にんにくですが、ハイシーズンは4月初旬頃からゴールデンウィークの前半で、遅くとも5月上旬です。
夏の観光シーズンやウィンタースポーツの時期である冬には、なかなか食べる機会が無い食材なのです。
食べ頃は、すぐ上の収穫後の写真くらいの「葉が開いてしまわない、若芽の頃」が味も歯ごたえも素晴らしいです。(群生している写真のものは、葉が開いてしまい「いちばんおいしい時期が過ぎてしまった」頃ですね)
熊との遭遇、滑落、遭難にご注意を
収穫時期は、熊さんの冬眠開け「腹減ったー」時期とがっちり重なります。
冬眠開けの熊は、私たちが探し求める行者にんにくが大好物。同じころに咲くミズバショウも熊は好みます。
行者にんにくの群生地は、森の中の傾斜地にあります。熊との遭遇や、滑落の危険性も高い場所へと採りに行くことになります。
探しているうちに、いつの間にか森の奥へと入り込んでしまい、方向感覚が無くなってしまうというのも最悪のパターン。
ひとりで森に入り込まないことや、熊よけの鈴、万が一遭遇した際の最後の手段となる「熊よけスプレー」などの装備が必需品です。
年々少なくなっています
原因は、やはり乱獲がいちばんの要因と言われています。
根こそぎとってしまうと、翌年は生えてきません。
根を残したとしても毎年採っていると、花が咲くこともなく次世代のものが育ちません。
収穫の際は根を抜くのではなく、根を残して収穫するのがマナーです。いちど収穫したものが再び食べられるまでに育つには、少なくとも5年はかかるとされる植物なのです。
「見つけた群生地の半分は採らずに残す」「細いものは、翌年まで育てる」「根は残して、軸の部分から刈り取る」ということを愛好家は行いますが、年々少なくなっている中、危険を冒しながら苦労して見つけた”狩り場”。
毎年起こる「スズラン」との誤食
例年起こる問題として、先に述べた熊との遭遇や遭難などの問題にくわえ、スズランと間違って採取してしまうことでの食中毒があります。
互いに開く葉が特徴で、花が咲く前のすずらんとの形態は確かにそっくり。しかしスズランには毒があるので気を付けなければいけません。
さらに行者にんにくのいちばんおいしい時期は、葉の開く前の若芽の頃。互いの特徴が見分けづらい時期でもあります。
見分けるポイントとしては、行者にんにくは根元付近は赤茶色の軸があることと、独特のニンニク臭を放つところで見分けるようにします。
「やみつきになる方、続出!」行者にんにく、人気の秘密とレシピはこちら
滋養強壮に良い、健康野菜です
本州では高地でしか採れず(北海道や東北、信州などの寒冷地でないと育たないこともあり、栽培する場所が限られるため)、あまり一般的に流通しない山菜・野菜であり、認知度としては低めです。
行者にんにくは強い滋養強壮の効果があり、「独特のうまみ」と、「強烈なニンニク臭」との相乗効果もあって、まさに病みつきとなる山菜です。
あのニンニクよりも、硫化アリル成分である「アリシン」を豊富に含んでいて、抗菌作用やビタミンB1活性を持続させる効果があります。免疫力を高めることで美容・健康面への効果が大きい健康野菜として、認知度が上がっています。
これまでに述べたように、北海道の山菜の中でも収穫の難易度がたいへん高いため「幻の山菜」と紹介するお店やサイトも見られます。(私は「キング・オブ・山菜」と勝手に呼んでいます)
このような料理の方法があります
素材を生かして「生で」
シーズンの収穫直後だけの味わいとしては「生でそのまま焼いて」というのがおすすめ。
ネギの仲間ですので、生でそのままでも食べられます。
洗って土を落とした後、水気をきって軽くあぶってそのまま食べると、味だけではなく歯ごたえも感じられて最高です。
北海道といえばジンギスカン バーベキューにも
もちろんジンギスカンにも相性抜群です。
洗った行者にんにくを、そのまま鍋に投入。肉や他の具材とも相性はバッチリです。
バーベキューの時は、洗ってそのまま鉄板へ乗せるだけ。
天ぷらも絶品
素材の味をそのままに、てんぷらにするのも最高。
軽く塩をふって、そのまま食べるのだけで絶品の食材です。
保存方法としても定番な、しょうゆ漬け
切ったものを小瓶に入れて、しょうゆで満たすと醤油漬けの出来上がりです。
そのまま食べる用なら、小指ほどの長さでカット。料理の具材にするなら、みじん切りなどにアレンジしてどうぞ。
冷凍庫に入れておけば、いつでもおいしい行者にんにくが食べられます。
具材に入れて、スタミナギョーザ
きざんで餃子に入ると、ご飯がものすごくすすみます。
しょうゆ漬けにしたものを、量はお好みとして具材にそのまま投入でOK。
パワーが足りなければ、しょうゆ漬けで満たしたしょうゆを付けていただくアレンジもいいですよ。
北海道限定の調味料で作る「めんみ漬け」
北海道には「めんみ」と呼ばれる、ローカル調味料があります。一般的なめんつゆに、さらにサバやホタテなどの数種類のだしを合わせた「めんつゆ」の豪華版とでも言いましょうか。
濃厚で、強い甘さが「めんみ」の特徴。
これに浸して、雰囲気を変えたマイルドな「めんみ漬け」もオツなものが出来上がります。
写真はキッコーマンさんのホームページから
しょうゆ漬けのように、濃い味にはなりません。ジュワーっと旨味が出てくる、そんな感じです。お酒のアテとして、かつお節を少しあわせて「見た目だけは、ほうれんそうのおひたし」「だけど味はパワー満点」のような感じで食べるのもいいですね。
他にも調理サイトなどでは、たくさんの調理方法が出てきますので、そちらをご参照ください。
食べ過ぎ注意!たいへんな臭気を発します
自分の息で、異臭騒ぎのような状態に(苦笑)
食べすぎには本当にご注意を!胃もたれで目が覚めます。その寝室が異臭騒ぎ。自分で驚きます。
尿まで汗までにおいます。栄養ドリンクを飲んだ後のような感じ…そんなかわいいものではありません。
食べるのは、仕事が休みの前日にした方が無難です。
道外の方になじみが無いのは、やはり臭いのせい?
「北海道が大好きで、何度も来ている」というリピーターの方でも、実際に食したことはほぼ無いという方が多いのではないでしょうか。
独特のクセがある「珍味」のような行者にんにくですので、旅行中に臭気を発することも敬遠される要因なのでしょう。
レストランや旅行中のホテルのバイキングなどでも、よくわからないため敬遠されている位置づけの食材なように感じます。
特に同行者のいる旅行中は遠慮してしまう食材のひとつです。
そのため、北海道を訪れた際に立ち寄られたレストランでも、出す店そのものが少ないのではないでしょうか。
行者にんにく、どうすれば食べられますか?「通販でも手に入ります」
お手軽に、通販がまずはおすすめ
4月から5月にかけて販売される、北海道産の天然(自然)ものをおすすめします。
最近では、季節限定で生をネット販売する業者さんや、フリマサイトで出品されていることも見かけるようになりました。
まず最初は定番の「醤油漬け」がおすすめ。食べてもよし、何にでも合う調味料としても重宝します。
栽培されたものより、やっぱり「生」がいちばん!
最近では健康野菜として知られるようになり、内地の一部でも収穫されている地域もあります。
決して栽培物が悪いわけではありませんし、品質としては管理された環境で作られている方が安全なのかもしれません。食べ比べたこともないので、味の良し悪しもわかりません。
しかし「北海道の大自然のパワーを感じてほしい」と言えばいいでしょうか。購入する際は、ぜひ北海道産の天然物を探してほしいのです。
4月の中旬から下旬ごろ、ぜひ道東にお越しください
旬の味を、その土地で食べるのがいちばんおいしい!
北海道のどの地域でも採れる「行者にんにく」道東での絶好の時期は、4月中頃からゴールデンウィークの前半ごろです。この季節の道東に来られて、旬の味を食べるというのはいかがでしょうか。
根室中標津空港・たんちょう釧路空港・女満別空港という3つの空港では、春はもちろん一年を通じて羽田からの定期便が飛んでいます。
新千歳空港を経由して道内便に乗ると、写真のようにプロペラ機へ歩いて搭乗するといった、レアな体験を出来ることがあります。
私の情報は、道東生活の生の声です。他の地域ではベストシーズンが違うなどあるといけませんので、間違いない情報として、ぜひ道東に来られるのをおすすめしたいのです。
旅行サイトなどで数件のお宿にめぼしを付けたら、その宿に「行者にんにくを食べたい」ことを事前に伝えてみてください。小さな宿だと、この時期はきっと用意しているはずです。
旅行サイトで見つからない、その土地の宿探しなら「とほ」一択
私が北海道を訪れる方に、必ず紹介するのが「とほ宿」という民宿です。
宿泊サイトでは扱われていない宿もある、この「とほ宿」。少人数のお客さんを相手に、宿主もお客さんも一緒に楽しく過ごすスタイルの宿が多く、旅慣れた方がよく利用されています。
私も移住前、移住後もお世話になった数件の宿では、この時期は「季節の味覚」として必ず行者にんにくが食卓に並びます。
紹介した「とほ宿」だけを集めたガイドブック『とほ』が売られています。一般の書店では並ばないガイドブックですので、気になられた方は、どうぞ次のリンクからお買い求めください。500円程度ですが、情報量満載の本です。
私は、北海道が大好きになって「北海道に住むと、どんな生活おくっているのかな」「いつかは北海道、道東に住んでみたいな」と思われた方が、有意義に感じてもらえるブログ記事を書いています。下のリンクから、他の話題もどうぞご覧ください。
今後とも北海道移住ブログ「なーしぃのひとりごと」を、よろしくお願いいたします。